小学校の社会のテストで,「国内の貨物の輸送量で最も多いのは自動車ですが,その理由を書きなさい」という問題に対し,我が家の息子は,「車を買う人が多いから」と答えた。
確かに問題文も不正確だ。「国内の貨物は自動車で輸送されるものが最も多いが,その理由は何か」とかけば,うちの息子も,誤読はしなかっただろう。
では,実際に輸送されている貨物の中で,最も量が多い品目は何だろうか。
自動車でないことは確実だ。
だって,宅配の車を見かける頻度に比べて,自動車を積んでいる車や船を,日常生活で見かけることは余りないから。(自動車は船に積んでいるかもしれない,と言う反論は認めるにやぶさかではないが,それなら,宅配の貨物だって,船で運んで宅配の自動車に移されたのかも知れない,という反論も認めるべきだ)
というわけで,最も運ばれている品目は何か,調べてみた。
まず,国内輸送量の総数は,53.9億トン。
うち,最も多いのは,砂利・砂・石材の6.85億トン。
以下,機械が4.7億トン,食料工業品が4.2億トン,窯業品が3.95億トンと続く・・
しかし,右上の表(http://www.butsuryu.or.jp/suji/pdf/20080510.pdf)を見て頂くとわかるのだが,合計に計上されていない品目がある。
その品目は,自動車でのみ輸送されていて,その輸送量は,なんと7.4億トンに上る。
その品目とは・・・「廃棄物」である・・・
廃棄物はゴミであって,有価物じゃないから貨物に入れてないのか,その辺の事情はわからない。
しかし,日本で最も多く運ばれている荷物が,工業生産品でもなく食料品でもなく,ゴミだというのは,なんだか象徴的だ・・・
(以下,余談)
小学5年になる息子は,最近理屈張ってきて,おざなりな答えでは納得してくれなくなってきた・・・
教科書には70年代からの貨物の輸送手段(船舶,自動車,列車,航空機)ごとの輸送量の変動のグラフが示してあって,80年代に,トップシェアが船舶から自動車に移り,以後その差が拡大している。
したがって先の問題は,「船舶から自動車に輸送手段がシフトした理由を示せ」ということになる。
でも,教科書の記述は,高速道路網の地図とトラックターミナルの仕組みが簡単に触れられているだけだ。
確かに,物敵基盤の整備と配送システムの整備は,シフトの必要条件ではあっただろうが,ではなぜその条件を整えなければならなかったのか,の回答にはならない。
この問題の答えは,70年代以降の我が国の産業構造の変化を踏まえたうえで,その変化がそれまでの物流に要求した事の答えが,道路網の整備なり配送システムの整備なりであった,と結ぶことになるのだろう。
が,この教科書の記述だけで,そこまでの授業をするのは大変そうだ。
というわけで,こんなに難しい問題は,出すべきじゃないんでしょうね・・・
(余談の余談)
最近はモーダルシフト,と言う考え方も普及してきましたので,船舶の巻き返しがあるのかも知れません。
そう言えば,世界に冠たる日本の造船業の技術を未来につなぐために,TSLとメガロフロートを是非とも・・・なんて話は,2000年頃だったでしょうか・・・
モーダルシフトは進むのか
かつて戦前から戦後にかけては、陸運事業における長距離輸送は鉄道・船舶が、近距離輸送では自動車が中心、という単純な図式が成り立っていた。しかし、1960年代からは、自動車による貨物輸送量が急速に増加していった。
この動向は一体、戦後高度成長において、何のどのような動きによって説明できるものなのだろうか。
このように、戦後から現在にかけて自動車による貨物輸送が急速に発達したことについて、前章の疑問に対する回答として、以下のような説明がなされている。
1 自動車生産の本格化、高速道路等の整備に後押しされた、モーダリゼーションの進展
2 臨海型から道路志向型への産業立地の変化
3 石炭から石油へのエネルギー革命の進展
モーダルシフトを阻害する要因として、上述のように、一般諸説が挙げられていた。
後に提示する自らの仮説を有効とするには、一般諸説での指摘では網羅できていない部分を明らかにする必要がある。したがって、まずは一般諸説を検証することから始めたい。
1 モーダリゼーションの発達
図5を見てもらいたい。このグラフは1965年から現在(2004年とする)までの全国の貨物自動車保有台数である。貨物自動車台数は、自動車による貨物輸送需要と比例する。これを見ると、確かに自動車全体の台数は伸び続けているが、貨物自動車の台数は1991年を境に減少している。図6を見ると、貨物車の台数と、需要を表す輸送重量の推移が、バブルの崩壊にともなって減少している。
したがって、自動車の普及=モータリゼーションが貨物車の増加=自動車による貨物輸送の増加の要因を網羅しているとは一概に結論づけられない。
2 工業立地の道路指向型
次に図7を見てほしい。このグラフは全国の工場のIC(インターチェンジ)からの距離別に割合を表したものである。昭和56年から平成初期にかけては高速道路I.C.の近隣の工場立地の増加は著しいが、その後は比較的安定している。その後も近隣立地は少し伸びているが、このことについては高度成長期に建設された地方工場の老朽化と地価下落が相まって工場の移転を促進したものと説明することができる。
3 エネルギー革命
1859年にアメリカで新しい石油採掘方式が開発され、石油の大量生産が可能になると、1950年代に中東やアフリカでの大油田の相次ぐ発見で、エネルギーの主役は石炭から石油へと移行した。このエネルギー革命によって、大量に安く供給された石油が、例に漏れず交通機関の動力燃料としてその消費量を飛躍的に増やした。
このようにエネルギー革命が与えた影響は、原油の単位価格の下落であり、図8「原油価格の推移」の通り、この原油が安価になることによって製造業開業の敷居を低くさせたことからモータリゼーションを生み出した、1で述べているように、自動車貨物輸送の発達の原因とは定義することはできない。
http://www.blu.m-net.ne.jp/~mission/seminar/righthand/righthand.docから抜粋