娘の宿題を解かされた・・・
これも今は昔,田舎の児比叡の山へ登りたりけるが,桜のめでたく咲きたりけるに,風のはげしく吹きけるを見て,この児さめざめと泣きけるを見て,僧のやはら寄りて,「などかうは泣かせ給ふぞ。この花の散るを惜しう覚えさせ給ふか。桜ははかなきものにて,かく程なくうつろひ候ふなり。されどもさのみぞ候ふ」と慰めければ,「桜の散らんはあながちにいかがせん,苦しからず。我が父の作りたる麦の花散りて実の入らざらん思ふがわびしき」といひて,さくりあげて,よよと泣きければ,うたてしやな。
(宇治拾遺 巻一第十三 田舎児桜散みて泣事)
これも昔の話,田舎の稚児が比叡山(延暦寺)に入り,桜が見事に咲いているところへ,風が激しく吹くのを見て,この稚児がさめざめと泣くのを見て,僧侶がそっと寄り,「なぜそのように泣くのです。この花が散るのを名残惜しく思われるのですか。桜は儚く,こうして程なく移ろい去るものです。ただそれだけに過ぎないのです」と慰めると,「桜が散るのはどうしようもないことだから,かまわない(関係ぇねえ)。父の作った麦の花が散って,実入りが少なかったらと思うのが侘しいんだ」と言い,しゃくりあげて,よよと泣いたというのだから,うたてしやな。
娘の質問
1 なぜ僧は稚児に対して丁寧な言葉を使っているのか
2 「うたてしやな」は,作者の誰に対する感想なのか
答え(超意訳)
僧は,稚児には桜の散るのを惜しむ風流心がある,と思った
そこで僧は,風流を解する稚児に(これは見所がある,と思ったのか)(敬意を表して),丁寧に,無常を説いた
(13世紀ですからね・・方丈記の時代ですぜ・・徒然草も書き始められた頃かも・・)
でも,稚児の涙はもっと現実的な理由だったので,全くの見込み違い
なんとも,うたてしやな
1は,まあ高校生には,敬意を表して,とか,からかって,とか教えるんでしょうな・・
男色の下心で,とはちょっと教えにくい・・
2は,難しい。
稚児の無教養を不快に思ったのか,僧の失敗(稚児を見損なったことorナンパ自体)を「おっと残念!!」と揶揄しているのか・・
冒頭に,「田舎の児」と明記しているから,期待はしていないはずなので,私は後者だと思うが,高校生には,前者だ,と教えるしかあるまい・・・
と,言うわけで,本日の甲突川の桜です。
散る桜 残る桜も 散る桜